分子細胞生物学の目標は生体の構成の基本素子である細胞の構造と機能を分子レベルで解明することであります。歴史的には生物の最も生物としての特徴として、親から子世代に伝達される情報、殊に、遺伝情報の仕組みの解明から分子生物学が発達してきて、生命の最小単位である細胞の機能へ応用するために細胞生物学は発達してきました。DNAやタンパクなどの分子から生命体である細胞を理解する方法が開発され一般に広まったため、この学問は急速に発展し現在に至っています。今、大きな課題は発生と分化の機構解明と脳と神経系の問題です。このためにも分子細胞生物学の手法はなくてはならないものになっています。
われわれの分子生物学研究部は、研究のテーマとして「中枢神経系疾患、特に脳腫瘍と脳梗塞の知治療法開発」、「培養による細胞の形態・遺伝子変化」、「ナノメディシン、特に蛍光ナノ粒子の医療応用」、「嗅覚人工臓器」、「生命の起源」、「ゲノムによる動物の棲息域・親子鑑定」などをメインに活動しています。
「中枢神経系疾患、特に脳腫瘍と脳梗塞の知治療法開発」に関しては、脳腫瘍や脳梗塞といった機能予後の回復が難しい疾患に対して分子細胞生物学的アプローチによる治療法の確立を目指すもので、中でも脳梗塞に関しては薬剤の新規DDSで本学スーパー特区の事業をサポートしています。「培養による細胞の形態・遺伝子変化」は生体内での細胞の役割を解明するために研究を進めています。3次元細胞培養と走査電子顕微鏡を用いてより良い生体のモデルの作成を目標にしています。研究所全体の大きなプロジェクトの一つに悪性腫瘍の治療法の開発があります。ここでの研究での基礎として培養細胞の微細構造の解析は多いに役に立ちます。「ナノメディシン、特に蛍光ナノ粒子の医療応用」は人体に毒性の少ない蛍光ナノ粒子の開発と生化学的・形態学的手法によって粒子の医療への応用の開発を目指しています。「嗅覚人工臓器」は環境や食品中の低分子化合物を複数の酸化半導体センサーを用いて識別するシステムの開発を行っており、「生命の起源」については従来知られていなかった炭酸泉からの生命誕生の可能性を実験で証明しています。また「ゲノムによる動物の棲息域・親子鑑定」については特に東南アジアからの密輸で問題となっている希少動物の出処を明らかにする目的で研究を進めています。
以上のような研究部として取り組んでいるプロジェクト研究のほかに、本研究部は総合医科学研究センター共用研究施設と連携して学内の研究を応援しています。研究がハイテク化するにつれ、様々な技術、測量機械が開発され、その結果様々な生物学的観察や測定が可能になってきました。この為に、それらを測定、解析する技術もまた、ハイテク化・専門化され、測定や解析に習熟が必要です。研究手法や実験に慣れていない研究者のために研究課題を表現化するための具体的な生化学的あるいは形態学的アプローチについてアドバイスを行ったり、学内みんなで利用できる新しい測定技法を開発したりしています。